遂にデジタル・フォスファ・オシロスコープを導入!

奨学金で買い、大切に使っていたTektronixのオシロスコープTDS2022Bと、研究室用に使っていたWittig TechnologiesのBench Scopeを、不況のためヤフオクで手放した。

だが、オシロスコープはツチノコには必須な道具なので、何かしらなければならない。

そこで、オシロを売って手に入れた金額の約半額で、新しいオシロスコープ(中古)をヤフオクで買った。

p1050386.jpg
Tektronix TDS3012 2ch 100MHz 1.25GS/s Digital Phosphor Oscilloscope

今まで使っていたTDS2022Bは、最新式のオシロスコープだが、Digital Storage Oscilloscope (DSO)というものであり、波形の書き換え速度が遅いため、完全な波形や、繰り返し波形でのノイズ量から輝度を変えて表示するというような、真の波形観察ができない、という問題があった。

この問題を解決したプロ仕様のオシロスコープがDigital Phosphor Oscilloscope (DPO)である。

そのため、価格も高く、新品で購入すると、現行モデルで最も安いTDS3012Cでさえ50万円以上もするため、とても手が出ない。しかし、ヤフオクで中古が安く出ていたため、買い換えても大幅に金額を節約することができた。

届いてみるとこの中古品、個人が使っていたものらしく、185時間程度しか使われていなかった。オシロスコープは使えば使うほど特性が変化してしまうため、指定時間毎に校正する必要がある。そのため総使用時間が記録されるようになっている。

中古品で業務用で使われていたものは、とんでもない時間使われているものが多いのだが、このようにホビー用に使われていたものは大して使われていないため、お買い得である。

まず、いつも通りAliceのPWMパルスを観察してみる。

tds3_1.png

何の変哲もないように見えるが、縦線の輝度が低く、また細く、横線が太く明るく表示されている。これがまさにDPOたるものであり、従来のDSOでは似たような表示をしてはいるが、ここまで信号の状態がわかりやすくはなかった。

で、コレを見る限り、キレイにパルスが0,1,0と出ているように見えるが、まず立ち上がり部分を思い切り拡大してみると・・・

tds3_2.png
立ち上がり部分を拡大したもの

実は結構派手にリンギングが発生しているのがわかる。1メモリ10nsなので、大体立ち上がり10ns後くらいに、約2Vまで電圧が落ちている。この程度なら問題はないが、もしも2VでLOWと判断するようなロジック回路で、それが10nsでも十分反応するような高速ロジック回路の場合、この信号でカウントさせたりすると、パルス1個なのに、たまに2回とカウントされるような、不安定な動作をすることもあったりする。

この回路では3.3V回路なので全く問題ないが、さらにリンギングが大きく、時間が長いような場合には問題になることもある。こういうものはこのような高性能なオシロスコープでないと見ることができない。

研究室用に使っていたWittig Technologiesのオシロスコープでは、このようなものは全く見ることができなかった。

次に、立ち上がりエッジでトリガをかけて、DELAYを用いて、立下りエッジ部分だけを拡大表示し、それをパーシスタンス表示させてみる。

tds3_3.png
立下り部分のDELAY表示

なんと!波形が左右に揺れている様子がよく分かる!
これがDPOの醍醐味である。従来のDSOではこういうことはできないため、このような時間軸での揺れ(ジッタ)が全く観測できなかったが、DPOなら、このようにジッタにより波形が時間軸で揺れている様子がよく分かるのである。

これを見た感じ、大体見える範囲では5nsくらいのジッタが生じているように観察できる。

ただ、オシロスコープはもともとジッタ測定装置ではないため、大まかなジッタの様子しか観察することはできない。そこで、この間買ったModulation Domain Analyzerにより、このジッタの様子が統計的に確実に分かるのである。

折角なのでこのジッタをModulation Domain Analyzerで統計的に測定した結果を再掲しておく。

p1050262.JPG
hp Modulation Domain AnalyzerによるAlice PWMパルスのジッタ

オシロスコープの黄色の線の左右の揺れ具合の統計を取ると、上の図のようになる。

次に、波形のさまざまな値を自動で測定するMEASURE機能も充実している。
このTDS3012では、全測定項目を自動で計算し、一覧表示させることができる。

tds3_4.png
測定結果の一覧表示

これで周期、周波数、立ち上がり時間、Pk-Pk、振幅など、あらゆる波形のデータが一発で自動的に計算され、一覧で表示される。

さすがTDS3000シリーズである。凄く便利だ。
従来使ってたTDS2022Bではこんなことはできなかった。

その他、トリガ機能も充実している。

tds3_5.png
パルス幅の異なる信号のトリガ

これはパルス幅がいろいろと異なるパルスの信号の、特定のパルスのみにトリガさせる、パルストリガ機能により表示させたものである。TDS2022Bでもこれはできたが、TDS3000ではさらに複雑なさまざまなトリガをかけることができる。

また、このような信号の場合、長時間の信号の一部分だけを拡大して詳細に見たいことは良くあるが、TDS2022Bでは見たいところにトリガをかけて、全体的に拡大して見るしかなかった。

まぁTDS2022Bでも似たようなことはできるのだが、メモリ長が短く、全体像が見えないため、今どこを見ているのか分かりにくいが、TDS3012なら指定ポイントの拡大表示もできるようになっている。

tds3_6.png
拡大表示

上の部分の[]で囲まれているところを拡大表示したものが下の部分である上の波形だと、立ち上がり時に普通に立ち上がっているように見えるが、実際には拡大してみると、このように一度立ち上がってからたち下がり、また立ち上がっている様子が良く分かる。

こんなわけで、ツチノコのオシロスコープは遂にDPOになり、本格的なものにグレードアップすることができた。しかもお金を節約して。

これでさらに研究環境が充実した。

You can leave a response, or trackback from your own site.

2 Responses to “遂にデジタル・フォスファ・オシロスコープを導入!”

  1. より:

    堀と言います。
    稚拙な質問ですみませんが、いつも何の作業に、このDPOを使われていますか?
    そして、このTDS3012Cは、アナログオシロとしての代用は十分に勤まるものでしょうか?(代用以上な期待を私はしているのですが)

  2. moni より:

    普段はコレとhp(Agilent)のMegaZoomとを併用しています。
    測定対象は主にデジタル回路ですが、数kHz〜数MHz程度のアナログ信号にも使ったりしています。

    個人的には十分アナログオシロの代用になると思います。
    アナログ回路の測定でアナログオシロからの置き換えにはベストではないかと思います。

    ただ、デジタル回路の測定に関してはTDS3000はややメモリ長が少ないことや、操作性がMegaZoomの方が良いことから、どちらかというとMegaZoomの方が気に入っています。

Leave a Reply

Powered by WordPress | Designed by: Free MMO | Thanks to Social Games, Game Music Soundtracks and MMORPG Wallpapers