SONY JA3ES #3 MDAで本格的に解析する!

面白くなってきたので、家にある測定機材を引っ張り出し、さらに本格的な解析をしてみることにした。

前回説明したように、MDのピックアップから捕らえた信号のジッターを正確に測定してみることにする。

測定信号はMDピックアップ出力のRF信号である。

hp54645a_tokunaga_ai.JPG
JA3ES MDピックアップRF信号(hp 54645Aオシロスコープにて測定)

このように、波が均等な時間間隔で並んでいるのだが、前回説明したように、その波の位置が左右にゆらいでいる。これをジッターと呼び、このゆらぎが隣の間隔との中間までいってしまうと、どちらなのか判定が付かなくなり、読み取りエラーとなる。

では、問題はどの程度のジッターがあるのかということだが、実はジッターを測定するための専用装置がツチノコ技術研究所にはあるのだ。

その名もhp 53310A Modulation Domain Analyzer

というわけで、早速測定してみた。

測定に用いたMDディスクはTDK LUCIR 74の新品ブランクディスクであり、SONY CMT-SE7にてSPモード、ATRAC TYPE-Sで録音した。
録音した音源は、CDアルバム「徳永愛/Scarlet」をデジタル録音し、10曲目を再生させてデータを取得した。

早速Modulation Domain AnalyzerにてRF信号のジッターを測定してみると・・・

md_10linear.JPG
10曲目のジッター測定結果(リニア表示)(hp 53310A MDSによる測定)

このグラフはジッターを測定し、そのヒストグラムを表示したものである。
測定サンプル信号数は100万サンプルを用いた。

横軸は信号のPos EdgeからNeg Edgeまでの時間間隔であり、一番左が0.0s、一番右が3.3632μsとなっている。
縦軸はその出現頻度を表しており、一番下が0.00%、一番上が5.000%である。

これをみると、9個の山が見えるが、これは左から順に3T~11Tの時間間隔の出現頻度であろう。

理論上は9個の線になるハズであるが、ジッターが生じるため、左右に太った山のようなヒストグラムになる。
それぞれの山が重なってしまうと読み取りエラーとなるわけだが、リニア表示で見る限りは完全にと言って良いほどそれぞれの山は独立しており、読み取りは全く問題なく行えているように見える。
つまりMD読み取りジッターはエラーが生じるほどではない、ということである。

これだと全く分からないため、このヒストグラムをLog表示することにより、極僅かなジッターも見てみると・・・

md_10log.JPG
10曲目のジッター測定結果(Log表示)(hp 53310A MDSによる測定)

Log表示にすると、谷の部分が見えてきた。

Log表示なので縦軸の値が大きく異なる。一番上の横線は5%、その下は0.5%、その下は0.05%・・・とい言う具合で、一番下の線は50μ% (=0.00005%)の線である。

測定マーカー機能で、一番左の山の頂上と、その右側の谷の部分の%を測定した結果は以下の通りである。

[3T頂上] 756.5ns, 4.113%
[3Tと4Tとの谷] 891.4ns, 1.135 m%

なんと、谷部分の頻度は僅か1.135 m%、つまり0.001135%である!

これはもうジッターによる読み取りエラーはほとんどないと考えていいレベルのようだ。

では次に、MDに関してよくある噂の一つを検証してみよう。

よく、ネットではMDは内側は音が悪く、外側になると音がよくなるなんてことが書かれている。
理屈としては、内側はMDを高速回転させて書き込み&読み出しするため、精度が悪くなりエラーが増えるため、音が悪くなるんだそうだ。

MDは内側から外側へ向かってデータを書いていくため、たとえば80分ディスクに60分録音したい場合は、事前に20分くらいのダミー録音をしておいてから、本番の録音をし、あとで最初のダミー録音を消去することにより、良い音質で録音できる、なんてことが書かれている。

だが、本当にそうなのだろうか?というわけで、早速今度は1曲目を再生させてMDSでジッターを測定してみる。
きちんとしたデータが取れるように、全ての測定サンプル数は100万サンプルに合わせてある。
その結果・・・

md_1log.JPG
1曲目のジッター測定結果(Log表示)(hp 53310A MDSによる測定)

こっ、これは・・・!?

確かに10曲目のデータと比べると全体的にジッターが増えているではないか。

正確な測定結果は以下の通りとなった。

[3T頂上] 764.0ns, 3.810%
[3Tと4Tとの谷] 898.9ns, 3.153 m%

3T頂上の頻度(つまり正確なデータ)は10曲目の4.113%から3.810%に下がり、3Tと4Tの谷部分(つまりエラーの量)は10曲目の1.135m%から3.153m%に上がった。

もっとさまざまな検証を行わなければ断定はできないが、今回の測定においては確かに1曲目の方が10曲目よりもエラーが多少大きくなっていることが確認できた。

しかし、このジッターによるエラーは極僅かであり、さらにエラー訂正も入るため、最終的にエラーとなる頻度は相当低いと思われる。
それを人間が聞き分けられる可能性は非常に低いと思われる。

以上より、MDAを用いたMDのジッター検証結果をまとめると以下のようになる。

・MDのレーザーピックアップによる読み取りデータ・ジッターは、データ読み取りに関しては十分小さな値であり、読み取りエラーが生じるようなレベルにはなく、ほぼ無視できるくらい正確にデータが読み取れている。

・MD内周のジッターの方が外周よりも大きくなるのは事実だが、それでも極僅かであり、エラー訂正によりさらにエラーは低下するため、ほとんど音質に影響するようなことはないだろう。

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