今回モニPC内部をSandyBridgeに一新したわけだが、多少トラブルがあった。
今回は、そのなかでもIntel DZ68DBマザーにPatriot DDR3-1600 4GBx2 (PSD38G1600KH)メモリを使ったときのBIOS上での設定についてである。
新モニPCの主な仕様を以下に示す。
CPU : Core i7 2600K
M/B : Intel DZ68DB
M/B BIOS Version : 0014
メモリ : PATRIOT DDR3-1600 4GBx2 PSD38G1600KH
どういうわけかDZ68DBマザーにこのメモリを使うと、DZ68DBのBIOS上でのメモリ設定でAUTOのままだとtRCにまったく違う値が設定されてしまうため、動作が不安定になることがある。
DDR3-1600と書いてはあるが、SPDにはJEDEC 685MHzまでしか書かれていないため、実際には1333程度のチップではないかと思われる。
で、1333で動作させるようにBIOSに設定するが、tRCだけは33以上でなければならないところが、なぜかAutoだと15が設定されてしまう。
最低限、tRCを手動で33にすれば問題はなくなる。
だが、実際にはそれ以外の項目も微妙に変な値が設定されるため、DZ68DB+PATRIOT DDR3-1600の組み合わせでは、マニュアルで設定したほうが良い。
このメモリのSPD情報から読み取ったメモリタイミングは以下のとおりである。
@685MHz | 9-9-9-24 (CL-RCD-RP-RAS) / 34-110-5-11-6-6 (RC-RFC-RRD-WR-WTR-RTP) |
@609MHz | 8-8-8-22 (CL-RCD-RP-RAS) / 30-98-4-10-5-5 (RC-RFC-RRD-WR-WTR-RTP) |
@533 MHz | 7-7-7-19 (CL-RCD-RP-RAS) / 27-86-4-8-4-4 (RC-RFC-RRD-WR-WTR-RTP) |
@457 MHz | 6-6-6-16 (CL-RCD-RP-RAS) / 23-74-3-7-4-4 (RC-RFC-RRD-WR-WTR-RTP) |
1600のときは800MHz, 1333のときは666MHzなのだが、なぜかそれら項目はなく、685MHzという中途半端な項目が設定されている。
これを信じる限り、685MHzでこのタイミングで動くわけだから、1333時(666MHz)には、685MHzの表の通りに設定してやればタイミング的に余裕があるから、自動設定ではこれをベースに設定してね、というPATRIOTからのメッセージにも思える。
また、この手のメモリチップのメーカー性能はどのメーカーのものでもほぼ同じであろうと推測し、SAMSUNGのDDR3 1333, 1600 2Gbitメモリチップのデータシートから、チップメーカーが保障しているタイミングの限界値から適切な設定値を求めてみた。
さらに、JEDEC準拠ということなので、DDR3-1600 CL9の場合のJEDECデータシートから、PATRIOTが主張しているこのメモリの限界設定値も求めた。
というわけで、このDZ68DBのBIOS上でのメモリタイミングは、以下のように設定するのが正しいと思われる。
設定項目 | SPD 685MHz | 1333 CL9 (JEDEC) | 1600 CL11 (JEDEC) | 1600 CL9 (JEDEC) |
---|---|---|---|---|
Memory Multiplier | 10:DDR3-1333 | 10:DDR3-1333 | 12:DDR3-1600 | 12:DDR3-1600 |
Memory Voltage | 1.5000 V | 1.5000 V | 1.5000 V | 1.5000 V |
tCL | 9 nCK | 9 nCK | 11 nCK | 9 nCK |
tRCD | 9 nCK | 9 nCK | 11 nCK | 9 nCK |
tRP | 9 nCK | 9 nCK | 11 nCK | 9 nCK |
tRASmin | 24 nCK | 24 nCK | 28 nCK | 28 nCK |
tRFC | 107 nCK | 107 nCK | 128 nCK | 128 nCK |
tRRD | 5 nCK | 4 nCK | 5 nCK | 5 nCK |
tWR | 11 nCK | 10 nCK | 12 nCK | 12 nCK |
tWTR | 6 nCK | 5 nCK | 6 nCK | 6 nCK |
tRTP | 6 nCK | 5 nCK | 6 nCK | 6 nCK |
tRC | 34 nCK | 33 nCK | 39 nCK | 37 nCK |
tFAW | 20 nCK | 20 nCK | 24 nCK | 24 nCK |
Command Rate | Auto | Auto | Auto | Auto |
【SPD 685 MHz】
PatriotメモリのSPD情報の685MHz時のものを参考に、DDR3-1333用にしたものである。685MHzでこのタイミングで動く、とPatriotは言っているわけだから、DDR3-1333時、つまり666MHzのときには当然このタイミングで多少余裕があるため、安定運用できると思われる。
自動設定では、通常はこのタイミング値がBIOSによって設定されると思われる。
【1333 CL9 (JEDEC)】
メモリチップがDDR3-1333規格のものが使われていると仮定した場合の、SAMSUNGメモリチップ・データシートを参考に、メーカー指定限界値を用いた設定である。また、この値はJEDECのDDR3-1333 CL9に準拠した設定値であるので、1333 CL9メモリモジュールの標準的な設定である。
【1600 CL11 (JEDEC)】
メモリチップがDDR3-1600規格のものが使われていて、JEDEC DDR3-1600 CL11という1600としては一番遅いものである、と仮定した場合の、JEDECとSAMSUNGメモリチップ・データシートを参考に求めた設定である。
【1600 CL9 (JEDEC)】
PATRIOTはこのメモリはDDR3-1600 CL9でJEDEC準拠だと言っている。そこで、JEDECのDDR3-1600 CL9の設定値を調べたものがこの設定である。このメモリの性能を最大限に引き出す設定である。
※これら数値は使用しているメモリチップの容量サイズによって異なる。メモリ1枚4GBでチップが16個付いている場合2Gbitチップでpage size 1KBなので、その場合は上の表の通りになる。それ以外の場合は値が変わる項目もあるので注意。
※Command Rateは2枚なら1T、4枚なら2Tを指定する。2枚でも2Tにした方が安定動作するだろうが、なぜかBIOSで2Tに設定しても、CPU-Z上では1Tとして表示されてしまう。BIOSのバグじゃないかと思われる。
安定動作重視なら【SPD 685 MHz】設定、DDR3-1333として性能を発揮したいなら【1333 CL9 (JEDEC)】設定、DDR3-1600メモリとして売ってるんだから、DDR3-1600で動くだろうが多少安定も望むなら【1600 CL11 (JEDEC)】設定、メーカーのうたい文句をそのまま信じるなら【1600 CL9 (JEDEC)】設定で使うのが良いだろう。
【1333 CL9 (JEDEC)】設定では、Memtest+86 v4.20 3周でエラーなし。
【1600 CL11 (JEDEC)】設定ではMemtest+86 v4.20 2周でエラーなし&Windows 7 64bit上でAleGr MEMTEST Pass 96でエラーなし。
【1600 CL9 (JEDEC)】設定ではMemtest+86 v4.20 5周でエラーなし&Windows 7 64bit上でAleGr MEMTEST Pass 200でエラーなしを確認している。
ちなみに、Intel DZ68DBは箱にはDDR3 1333/1066MHz対応と書かれているが、BIOS上では1600MHzや、さらに1867MHz, 2133MHzまで選ぶことができるようになっている。
そもそも現在発売されているSandy BridgeはDDR3-1333までしか正式対応していないため、それ以上での使用はそもそもオーバークロックになる。というわけで、現時点では【1333 CL9 (JEDEC)】で使うのがオススメである。
他のマザーボードやメモリでも考え方は同じなので、メモリの相性問題が出たりして動作が不安定になる際には参考にしてほしい。